噎せかえる程に甘いその香りは
【side 葵】
家に向かって歩く。
左手には俺より少し冷たい彼女の手をしっかり繋いで。
会議室での告白は彼女にとってかなりの緊張を強いるものだったに違いない。
あの後打ち合わせの時間が迫っていた副社長が慌ただしく去り、菊池さんも無事帰って行った。
菊池さんは去り際「知らなかった事とはいえ酷い事を言ってごめんなさい」と仄を恐縮させる程謝り、副社長に至っては「俺は君を認めないからな。」と俺を威嚇して行ったが。
二人を見送った仄は力尽きたように椅子に崩れ脱力した。
そんな彼女を見て俺が営業課ヘ行き課長に断りを入れ彼女の荷物を持ってきて、ついでに自分の課ヘ行って諸々片付けて、一緒に帰宅の途に付いた。
その時の俺はと言えばオメデタイ程に浮かれていた。
隠されていた事実は想像以上に大きいものだったが、何はともあれ―――…
はぁー…副社長との噂がデマで良かった。
俺の知らない所で連絡を取り合ったり会ったりしていたのは紛れもない事実だったけれど、それは浮気ではなく兄妹として、だもんな。
………ん?
でもこの前会社でキスしてなかったか…?