噎せかえる程に甘いその香りは

途方にくれる私に「で、仄は――――。」と迫ってきた葵さんは言葉の途中で動きを止め、恐る恐ると言った顔付きで問い直した。


「好き、だよね?俺の事。」


何を……今更。

改めて伝える事の恥ずかしさに顔を赤くしながらコクコクと首を動かすのが一杯一杯だ。

それにホッとしたような顔を見せて葵さんが続ける。


「聞いても今一信じられないっていうか。いつから?…っていうか、切欠ってなんだったんだ?正直言って仄とこういう関係になる前まで殆ど話した記憶もないし、接点もなかったよな。」


じっと私を見詰める双眸は答えが出るまで動く気配はない。

これは…言わなきゃダメかな。

私は観念してそっと口を開く。


「……香澄さんを愛してる所……」

「え?」

「きっと私、愛情という物に憧れてて、…弱いんだと思います。亡くなっても尚彼女の事を思ってる葵さんにいつの間にか惹かれて……この人に愛されたい。この人に愛される立場ならどんなに幸せになれるだろうって…」


父の愛を知る事は出来なかった。

母の愛は途中で失った。

永遠の愛なんて本気で信じている訳じゃないけれど、それでも…


葵さんみたいな人ならって思えた。


失った恋人を五年近くも思い続けていた人だから。

こんなに深く人を愛せる人なんだもの。

この人に愛される立場ならどれほどの愛情を注いで貰えるだろうか。

それはどんなに幸せなんだろうか、と。


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