TRIGGER!2
 それも全く気が付いていない様子で、山田は屈託のない笑顔をジョージと彩香に向ける。


「でも、良かったです。お二人のケンカが収まって・・・やっぱり、良くないですよ。ケンカは」
「ケンカじゃねぇよ!」


 すぐさま、彩香が反応する。


「ケンカじゃなくても、僕はあなた達の監視が任務なんです・・・やっぱり、監視対象が険悪な感じですと・・・僕も気分が良くないし・・・」


 山田はほっとしたように息を吐くと、一枚の封筒を胸ポケットから取り出した。


「何だよそれ?」
「あなた方が、少しでも・・・その、不穏な動きをしたら、これを見せろと、高田署長が」
「見せろ」


 ソッコーで言う彩香に、山田は首を横に振りながら笑う。


「あはは、ダメですよ。まだ、全然不穏な動き、してない・・・ですよね?」
「お前ぇ・・・」


 ヒクヒクと唇を震わせる彩香。
 それにしても、あの封筒には何が書いてあるのだろう。
 こんな風にちらつかされると、気になって仕方がない。


「あ・・・でも」


 まじまじと封筒を見ながら、山田は真顔で彩香に聞く。


「不穏な動き・・・って、何ですかねぇ・・・?」


 まさかこの山田青年、彩香達がまともに出頭するなどと考えているのではないだろうか?


「いいから見せろ」


 あからさまにテンポが合わない山田にイライラしながら、彩香は言った。
 聞いているのかいないのか、山田は封筒を胸ポケットにしまう。


「あぁ、署長が言ってたんですけど・・・これ、あなた方が欲しがるものらしいですよ?」
「へぇ・・・そんなもん見せびらかすなんて、いい度胸じゃねぇか・・・!」
「いえいえ、そんなに褒められる事じゃないです・・・署長が、そうしろ、と」


 どうもこの山田という男は、彩香とペースがトコトン噛み合わないらしい。
 んぎぎぎ、と奥歯を噛み締めていると、救急車は病院に到着した。


「じゃあ僕・・・治療が終わるまで、ここで・・・大人しく、待ってますから。いってらっしゃい」


 病院に入っていく三人を、山田は満面の笑顔でゆっくりと手を振りながら見送る。


「なんかアイツ・・・生理的にムリだ」
「まぁまぁ彩香さん、あなた相手に平気で張り合うんですから大したものですよ、彼は」


 風間とそんな話をしている間に、ジョージは1人でどんどん歩いていく。


「マジで何なんだよ、ジョージのやつ」
「さぁ・・・でも、ジョージも何か思うところがあるんでしょう。意味もなくあんな態度を取る男ではありませんから」


 それは分かっているつもりなのだが。
 言ってくれないと、何も分からないではないか。


「ま、ジョージの事ですからそのうち普通に戻りますよ。私達も治療が終わったらイチゴの病室に行きますので、そこで待っていて下さい」
「あぁ」


 彩香は風間と別れて、病棟に向かった。
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