TRIGGER!2
☆  ☆  ☆



 駅にほど近い早朝の病院は、まだみんな寝静まっているようだ。
 眠気のピークに達しているナースステーションにイチゴの病室がどこかを聞くと、看護士は彩香の格好を見ても大して驚きもせずに教えてくれた。
 さすが、ならず者たちがはびこる繁華街を抱える病院の看護士である。


「ここか」


 403号室は、どうやら個室のようだ。


「贅沢してんなぁ」


 どうせまだ寝てるんだろう、と、彩香はコン、と軽くノックしただけで病室のドアを開ける。


「起きろー、見舞いに来てやったぞー!」
「ん・・・誰よぉ・・・」


 窓際のベッドには仕切りのカーテンが引かれていて、手前のソファには人間が2人、くっ付いて眠っていた。
 どっかのオヤジかと思って、彩香はマジマジとソファを見つめ。


「誰だお前ら?」


 そう声をかけると、ソファのオヤジ2人はむっくりと起き上がった。
 ついでにカーテンの仕切りの向こうからもう1人がこっちを覗く。


「ママ? 今日はやたらと早いじゃない・・・」


 目をこすりながら、こっちを見つめるオヤジ。
 彩香はキョトンとして、そんな3人を交互に見つめる。
 そんな彩香を見て、オヤジ3人は一瞬固まって。


「あっ・・・!?」
「彩香なのぉ~!?」
「いやぁぁぁぁ~っ!!」


 心持ち顔をひきつらせながら、彩香は口々に叫ぶ3人を見て。
 このリアクションは・・・間違いない、オカマちゃんトリオだ。
 店に出るときのカツラはつけていなく、3人とも短髪で、しかも口元には無精髭まで生やしているが。


「何でいきなり来るのよぉ!!」
「寝起きでスッピンとか、もぉ最悪ぅー!!」
「ちょっと、今着替えるから出てってぇ!!」


 慌てふためく3人を、彩香は腰に手を当てて呆れ顔で見渡して。


「朝からうるせぇなぁ。化粧してもしなくても気持ち悪いのはおんなじだろうが」
「失礼ね!!」


 キーッ、とオヤジ・・・もとい、オカマちゃんトリオは彩香を睨み付けた。
 そしてふと、彩香の格好に気付く。


「あら、どうしちゃったのよ彩香、その格好?」
「あぁこれ?」


 簡単に事情を説明して着替えを貸して貰おうと思ったのだが。
 キウイの大袈裟な声に遮られる。


「まさかその上着・・・風間ちゃん来てるのぉ!?」


 コクリと彩香は頷く。
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