TRIGGER!2
☆  ☆  ☆




 風間とジョージと共に裏路地に入っていく3人を見送って。


「ねぇ千絵ちゃん、いいの? 見届けなくて」


 桜子が聞いた。


「いいのよ。あの子面白いから、ぜーんぶ任せるわ」
「そんな事言っちゃってぇ・・・美和の姿見たから、戦意喪失したんじゃないのぉ?」


 本当は水島も、事実を知るのが怖いのかも知れない。
 さっき風間が言っていた『利用価値のある女』。
 その言葉が、胸につっかえて。


「やはり記憶を無くしてはいなかったな」


 こっちを見てそう言う雛子。
 水島は白衣の胸ポケットからタバコを取り出した。


「あれは一時的なものよ。あの子、赤いドレスの子と会ったばかりなんでしょ。薬を飲んだ後の出来事がキッカケで伝達物質が脳に一時的に伝わっただけね」
「世界には理屈だけで説明出来ぬ事だってあるのだ。この世界だってそうだろう?」
「はいはい、2人は全く正反対の分野なんだから、お互いに仲良くすればいいでしょ」


 何かと反発し合う水島と雛子を、桜子が苦笑しながらたしなめる。


「あのぉ・・・ゴメン、悪いんだけど」


 苦しそうに、友香が言った。


「そろそろ・・・帰ってもいいかな?」
「やだ、友ちゃん!」


 この世界に長居出来ない友香。
 いつもより無理をしていたのだろう、その顔は真っ青で、まともに立ってもいられないようだ。


「不便よねぇ、その身体。どうしてそうなったのか、あたしに研究させてよ」


 苦しそうな友香の前に立ち、煙を吐きながら水島が言った。


「謹んでお断りします、水島先生」


 真っ青になりながらも、友香は言い返す。
 そんな友香を支えて、桜子が。


「どうしましょ、やっぱり近いから、ここから向こうに帰る?」
「うん・・・」
「ちょっと千絵ちゃん、あんたも医者の端くれなら一緒に来てよ!」
「え? いやあたし、研究が・・・」
「うるさいわねぇ」


 片手に友香を抱え、もう片方の手で後込みしている水島の襟首を掴んで、桜子は二人を引きずりながら雛子を振り返る。


「雛ちゃんは? どうするの?」
「俺は行かん」
「・・・そう」


 桜子はそれだけ言うと、『スターダスト』の裏手に向かって歩き出した。
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