罰ゲームでヤンキー君に告白されました。
え? え? え?
い、いいいいま、口っ……!
逃げようと身体を引くと、逃げられないように腕を押さえられる。
「あ、あのっ、龍也く、何っ」
龍也君は唐突におかしなことを言い出した。
「付き合ってるんだから、キスくらいしとこうと思って」
「……っ!」
そう言って、また顔を近づける。
龍也君の瞳が、なんだか獣みたいに鋭くて身動きがとれない。
「ひな」
耳元でささやかれると、顔がぼっと赤くなる。
待って!? どういうこと!?
キスくらいって、キスくらいって!
そんなのしたことないし!
だいたい外だし、近所の人とかに見られるかもしれないし、それより心の準備がっ!
「きゃあああああああっ!」
色々考えた結果、思わず龍也君を突き飛ばしてしまった。
「そ、そういうのは無理っ!」
ぽかんと口を開けている龍也君を放置して、ダッシュで家の中に入った。
ばん、と勢いよく玄関の扉をしめる。
鍵をかけたあとも、どくどくと心臓が脈をうっていた。
な、何考えてんのあの人!?
キスくらいって、本当になんで!?
龍也君の真剣な瞳を思い出して、ずるずると床に座り込んだ。
胸が苦しい。
破裂してしまいそうだ。
外から何の音も聞こえないのが気になって、覗き窓からそおっと外の様子を見てみる。
何か言いにくるかと思ったけれど、諦めたらしい。
そこにもう龍也くんの姿はなかった。