運び屋の受難
「…離してくれない?」
腕を振ろうとする。びくともしない。
こんな細い腕のどこにこれほどの力が眠っているのか、不思議に思った。
「逃がさないよ」
男は私を掴んでいない方の手でポケットからナイフを取り出した。
果物ナイフのような、てか多分果物ナイフ。切れ味があまりよくなさそうなやつだ。
「いいナイフじゃないから多分痛いと思うけど…精々苦しんでね」
ナイフの刃先が私に向けられる。
男は笑っているけど、これは冗談でもなんでもないらしい。
私を見る目に狂気を感じた。