もしも私がーcasket in cremtion。

 追われること数百メートル、あと少しで曲がり角に差し掛かる時、靭が冷静に疑問を投げかけた。

「おかしいよね?後ろの人達に誘導されてるみたい。」

 その問いに幟呉が平然と答えた。

「ああ、そうだな。」

 そのまま曲がり角を右に曲がると、五つの扉が目の前に現れた。
 後ろを振り向くと、無数の足音がかけてくるのが聞こえる。
 まるで雪崩のよう……。その時、

 ピ~ガガ!

 という音がして、天井近くのスピーカーから声がした。隣には防犯カメラが付いていた。

『あ~、テステス。聞こえるかな?ハハッその様子じゃあ、聞こえてるみたいだね。』

 スピーカーから流れるその声は、まるで子供の声みたい。
 そう、ディーガスから聞いた、あの声だった。

『WELCOME!諸君。良くココまで来たね、ご褒美だよ!後ろを見てごらん。』

 その声に従って、後ろを振り向こうとしたその時!
 
    ドッッドッドッド!

 無数の人だかりが曲がり角を曲がって私達と対面した。
 その数はゆうに百を越えている。

「さっきより、増えてない?」

 私が引きつりながら切り出すと、皆思い思いの言葉を口にした。

「おいおい何だよ。この量は。」

「ちょっとヤバイよね?皆さん手には銃器ですか……。シャレになんないよねぇ?」

「そうだな。」

 幟呉だけいつもと変わらぬ口調で言う。
 緊張感が無いんだか、場の空気が読めないのか、怖いもの知らずなのか、幟呉もやっぱり変わってる。
 改めて私は幟呉の〝何だか凄いところ〟を確認した。すると永璃が

「幟呉さん、緊迫感台無しなコメントありがとよ。」

 と、皮肉った。

「永璃も緊迫感なくない?」

 密かに突っ込みを入れると、またスピーカーから声がした。

『もっと、緊張してくれなきゃ、困るんだよなぁ。よっし!全員、かまえ!』

 その言葉と共に ガスガシガシャ! 鉄の口が私達を睨んだ。

(もうココで死ぬの!?)

 向けられた銃口を前に私は、目を固く瞑った。

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