クリスマスに泣かないように
「そんなときにリエちゃんが言った、浮気してみろって言葉が面白くてね
実行してみたんだ」
「私を使ったんかい」
「や、あのぉ、違うんだよっ!俺さ、女友達とかいないの。
だからリエちゃんと仲良くなって、それをツマに見せびらかしてヤキモチ焼かせよーとおもったんだ」
うわ、単純思考。
でもこいつらしいというか、なんとも平和的な案だった。
「だけど、思ったより深入りしてた」
「深入り?」
「リエちゃんの隣が居心地よかったんだ。愛想笑いの家庭よりも」
ひどく切ない顔をしていた。
遠くを見やり、何を考えてるのかいまいち読めない目。
「で、酒によってつい本音が出ちゃったってわけさ」
「本音…」
「気づけよ発言」
――あれは、本音だったのか。
自惚れとかじゃなくて、タカシの本心だったのか。
「…」
なんともまあ、後出しじゃんけんな話である。
嬉しいやら恥ずかしいやら、オクサンのいる身で何やってんだとか。
複雑な心境にならざるをえないじゃないか。