コトノハの園で
それぞれが互いに忙しい今、どうしても三人で祝いをしたいと思ってくれた伊達さんの気持ちはとても嬉しい。けど、眠そうな健人への配慮も必要だ。今日は早めに帰るのがいいだろう。
「今日は鍋だって」
「ずいぶんと季節はずれだね。ゴールデンウィークで、もう初夏の勢いなのに」
「独りじゃ出来ないだろって、千花が」
「ありがたいね。結婚って、いいもものだね」
「悪くはねえよ。でも透、発言がキモイ。そんなに寂しいのかよ」
「いや、そんなことじゃないよ」
「……ふーん」
下準備を済ませてあった鍋の材料を運ぶのを手伝うと、あっという間にテーブルの隙間は埋まった。
「嫌いなもの、あったっけ?」
「いや、無いよ。それより準備をほとんど伊達さんだけでさせてごめん」
「ううん。野菜切るだけだもんっ」
会話の間も手際よく食事の準備をしていく伊達さんに、僕は内心驚いていた。高校時代は、クラスでも上位の雑さだったものだから。
「寂しい独身男に団欒を分けてやるんだ、感謝しろ。そして、極みまで羨ましがれ。そして願望を強くしやがれ」
「……はいはい。もう充分持ってるよ」
ソファーから口だけ出す健人に、いい加減に返事をしながら、僕は伊達さんの助手に勤しんだ。