コトノハの園で


そうだよね。私なんかが、全てを隠せるわけがない。そんなことが可能だったなら、もっと色々違う方法だって思いついてた。


可能だったら、こんなふうに、誰かに嘘をつかなければいけなくなることなんて、なかったのにね……。


「まったく、菜々ちゃんは……大人って……」


「前にもあったよね。桜ちゃんだけ。私を大人に分類してくれるのは」


「大人は、卑怯だね」


「……、だね」


本当にね。


「菜々ちゃんもだけど、みーんなそう。けど、桜は怒ってるんじゃないんだよ?」


私だったらきっと怒ってる。けど、私と違う桜ちゃんは、なんでそうはならないんだろう。


分からない。


オレンジジュースを一口飲んだあと、その言葉に嘘なんかまったくない声でもう一度呟く――違う、と。


「桜とは、違うの。だって菜々ちゃんは立派に女の人なんだもん。ちっちゃくて、桜と同じ歳に間違われることだってあるのに、意識をさせる。いとも簡単に。桜がそうだったらいいなって思うこと、全部行き着く先は菜々ちゃん。……悔しい。羨ましい……。桜もって思うけど、それは無理なの」


「……それでも、桜ちゃんは私を怒ってないの?」


頷いてくれる。


「――桜は、そんな菜々ちゃんがキレイで大好き。だから、それでいいの」


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