コトノハの園で


今日の幸せだったこと――


それは些細なことだけど、いつもは売り切れのパンが買えたり、道を尋ねられて説明に成功できたりしたこと。


ケンカしてた親友と仲直りできたこと。別れ際、アニメみたいに交わした握手は周囲の注目を浴びて恥ずかしかったけど。


私の行動が、たとえほんの少しでも、森野さんの記憶に残ってくれていたこと。


初めての、森野さんからの会話。言葉はいつもよりも豊富だった。


引きつってはいたけど、一瞬笑ってくれたこと。私に対しての、ふと漏れるそういう顔は今日が始めてだった。


次々浮かんでくるのは森野さんのことで、我ながら呆れてしまう。


色ボケもいいとこ。


浮かれすぎたらいけないんだから。


でも、


そんな私もいいんじゃない?


なんてことも思った。


だって、こんな感情、久しぶりだったんだ。


甘いあまい感情で満ちる心が、本当に幸せでたまらなかったんだ。








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