コトノハの園で


ふたりのやりとりを聞きながら、どのあたりからだろうと推測していたら、代わりに、といった具合に健人が答える。青空の絵が施されたカフェの天井を仰ぎ、オーバーリアクションで。


「千花には無理。透は相変わらず女にビクつく毎日だけどさ」


「別にビクビクなんてしていない」


「アタシは、森野君がまともな時代からの付き合いだから? ――うん。なら今からでも遅くない。諸悪の根源、潰しに行っちゃう?」


「っ!? だっ、伊達さんっ、早まらないでっ! 僕はもう平気なんだしっ」


本当に潰しに行ってしまいそうな伊達さんを、僕だけが必死になって宥めた。





「まあ、千花は座っとけ」


ひとしきり伊達さんが騒いだあと、ようやく健人は言う。対処してくれるなら、もっと早くにそうしてほしかった。


はっきりとは見ていないけれど……おそらく、近い席の人たちには相当笑われている空気を感じる。


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