コトノハの園で
「アタシが協力しよっか?」
唐突に、背後に女性の声。
健人が時間を確認しながら笑う。
「早かったな、千花」
「先にお茶でもしてようかと」
頭上で交わされる会話を遮らないように振り返ると、当然だけれど、伊達さんが立っていた。
健人は中学から、伊達さんは高校からの僕の友人で、両者は恋人同士だ。
「森野君、久しぶりだねっ」
「うっ、うん。伊達さんは――元気そうだね。確実に」
夏休みに太陽の楽園にでも旅行したのか、伊達さんはこんがりと日焼けしている。黄色いノースリーブから伸びる腕や、真っ白な歯を覗かせる笑顔は健康優良児そのもので、いつもよりも一層元気そうだ。
「――で、協力は必要かな?」
僕の向かい側、健人の隣に座りながら、伊達さんが訊ねてくる。
「千花。いつから立ち聞きしてたんだよ?」
「んーと。健ちゃんが森野君を追い込みだしたとこくらい」
「してねーよ」
「はーい、そうだね。――ま、話の概要を理解出来るくらいには。お話、中断させないようにと思って」