コトノハの園で
言えるわけがない……。
偶然なのは本当だ。
けれど、僕が色々と慣れるため、平気になるために、深町さんを利用している、などと……。
僕からも話す努力をし、深町さんからは気遣いある対応を受ける日々。
それは、なかなかに順調で。
喜ばしく、そして、後ろめたくも、といった具合だ。
これが健人の言っていたリハビリなのだろうか。
一人の人に焦点を絞ったのが功を奏したのかもしれない。
適度な距離を保てる深町さんと、じっくりゆっくり話してみれば、案外すんなりと、時間は過ぎていく。
最初から無理だと、駄目だと思っていたから。どこかでまだ……女なんてといじける心があったから、僕は……。
過去を振り返る――と、以前は目を背けていたことに対して、反省をすることが増えた気がする。なんだ、もう平気じゃないかと自信もついた。
心の中、深町さんはなんて良い人なのだろうと感謝をする。
「――、?」
ふと気付くと桜ちゃんがいない。いつの間にか帰ってしまったようだ。
独り残されたベンチで口元をほころばせる僕の姿は、誰かに見られたら、さぞかし気味の悪かったことだろう。