コトノハの園で


――……


そうして、幸せな空間への扉は閉じられた。


少しだけ、そのあとの何かを期待してしまい、私はようやく認める。


あの中庭での幸せな時間で、私の心は充分に癒されてしまい、欲しくはなかったはずの、未来を望んでしまっていた。


……けど、私は……私の手は、引き寄せられることはなく、足どりは誰にも止められることなく、図書館を去ることとなる。


嘘つきな私にはとてもお似合いな最後。


でも、神様が与えてくれたのかもしれない。


――それは私の卒業まで――


裏切られることが怖い森野さんに、約束を守ることのできる私でいられるための。


大丈夫――そう、願えるための。









私は、本当に、森野さんのことが大好きでした。


好きで、好きで好きで好きで好きで大好きで。


こんな言葉だけじゃないのに、この言葉しか出てこない。


「……馬鹿だ」


愛おしかった。


望まれてはいなかったけど、全てから守らせてほしかった。


私が何かすることで笑ってくれるなら何でもしたかった。


――本当に。本当に、大好きでした。









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