大嫌いなアイツの彼女になりました。
「うぅー……なんで、なんで、あたしが怒られなくちゃなんないの……」
双葉ちゃんは、ポロポロ流れ出てくる涙を必死で拭いながらそう言った。
「……双葉ちゃん」
あたしはゆっくりしゃがみ込み、双葉ちゃんの頭を撫で続ける。
「あたしはっ、お兄ちゃんのこと想って……」
「……そうだね。双葉ちゃんは、昔から……」
そこまで言って、あたしは口を噤む。
……ヤバい。思わず、昔から知り合いだったことを明かしてしまう所だった。
少し焦りつつ双葉ちゃんを見るが、双葉ちゃんはそんなこと気にもしていないようで、必死に涙を拭っている。
「……寂しいよ。昔は、いっつも一緒だったのに……」
双葉ちゃんのその言葉で、あたしは一瞬、昔のことを思い出した。
……確かに、双葉ちゃんはいつも望月相馬にベッタリだった。
きっと、大きくなるに連れ出来てきた距離に、双葉ちゃんは心を痛めてたんだろう。
そこに現れた、お兄ちゃんの彼女。お兄ちゃんが大好きな双葉ちゃんからしてみたら、〝あたし〟という存在はものすごく恨めしいものだったのだろう。
……悪いこと、しちゃったな。
そう思って、泣き続ける双葉ちゃんを見つめた。