大嫌いなアイツの彼女になりました。
双葉ちゃんはほんの少し悲しそうな表情を見せた。
「えっと……なんだったっけ」
「『大丈夫?』だよ。真っ先に、純香ちゃんが怪我していないか確認したの」
「……そう、だったっけ」
可笑しい。
その部分だけ、都合良く記憶が無くなっている。
でも、双葉ちゃんは、きっと嘘をついていない。
あたしの記憶の無さより、何より可笑しいのは、望月相馬がそんなに優しかったってことだ。
あたしの中のイメージとは、かけ離れている。
かけ離れ過ぎだ。
どうしてだろう。
どうしてあたしは、望月相馬の優しかった記憶だけ、綺麗に消しているんだろう?
それが当たり前だと思ってたから?
それとも……本当は覚えてるのに、忘れている〝フリ〟をしているだけ?
キーンという音と共に、頭が痛くなった。
「……驚いたよ。嘘でしょ?って。それと同時に、純香ちゃんに嫉妬した。いっつもお兄ちゃんに特別扱いされて。ずるいって思った」
「そんなことないよ、双葉ちゃんの方が……」
あたしの記憶の中では、望月相馬は双葉ちゃんをとっても大切にしていた。
「絶対違う!……とにかく、純香ちゃんはあたしにとって邪魔な存在だったのっ」
「え、そこまではっきり言う……?」