大嫌いなアイツの彼女になりました。









 始業式も終わり、後はホームルームだけ。

 しかしそのホームルームももう終わろうとしている、現在。



 あたしはまだ、体育館で見た望月相馬のことを考えていた。


 本当に、あれは望月相馬だったのだろうか。

 少しずつあの情景が薄れてきて、真実がよく分からなくなっていく。


 自分に都合の良い風に記憶がすり替えられていく気がするけど、やっぱり信じられなくて。


 だって、もし望月相馬が同じ学校だったのなら、絶対気付いているはずだから。

 あたしがアイツのことを忘れたことは一度だってないんだから。



「きりーつ、礼」

 やる気のない学級委員の声によって、ホームルームも終わってしまった。


 みんながそれぞれ帰り支度をし始める。

 あたしも鞄の中に荷物を入れて、帰ろうと鞄を肩に掛けた。


 その時、

「ちょ、あれって……」



「ヤバい、超カッコいい」


「あたし目当てかなぁ」


「妄想のし過ぎだよ、どうせ中川くんに用でしょ」


「二人仲良いもんねー」

 女子の楽しそうな会話が耳に入ってくる。


 いや、その子たちだけじゃない。

 クラス中の女子がキャーキャー言っている。





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