ショータロー☆コンプレックス
「うわっ。あ、あぶなっ」


何が起きたのか一瞬分からなかったけど、それでもオレは条件反射で即座にブレーキを踏んだ。


「前の車追い掛けろ!」


そう叫びながらすごい勢いで助手席に乗り込んで来たのは、ほんの少し前に別れたばかりの辻谷だった。


「え?え?」


「今走り出した、青いゴルフだよ!ほら、あそこに見えるだろ!」


パニックになりながらも、彼の指差す先に視線を向けると、確かに数メートル先に、ロータリーのカーブに沿って走る青い車が見て取れた。


「え?つ、つーか、何でオレが追い掛ける必要が……」
「グダグダ言ってねーで早く行け!」
「は、はいっ!」


辻谷の迫力に押され、訳も分からぬままにオレは車を発進させ、ゴルフを追う事になった。


まだ走り出して間もなかったという事と、ロータリーを抜けて数100メートル行った先には交差点があり、ちょうど信号が赤になったため、幸いにもすぐに追い付く事ができた。


ただ、間に一台車を挟んでいる。


「ちょうど良いや。真後ろに付けるのはマズイからな」


しかし辻谷からすると、その状況はむしろ好都合だったらしい。


「この位置をキープしながら走れよ。だけど信号で捕まって見失わないようにな」


「そ、そんな器用な事できないです!」
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