ショータロー☆コンプレックス
オレはこの後、愛しの瑠美ちゃんとの、念願だった嬉し恥ずかしドライブデートをするんだから。


「一体どういう事なんですかっ?」


シートベルトをかけつつ、我ながらキレ気味の口調で問い掛けた。


「オレ、この後大切な用事があるんですけど。あの車を追い掛けるって、一体どこまで追い掛けるつもりなんですか?」


「行き先なんて俺だって分からねぇよ。だから尾行すんだろが」


面倒くさそうに吐き出されたその言葉にさらにムカっ腹が立ったものの、運転中の相手とケンカするのもためらわれ、オレはとりあえず自分自身を落ち着かせつつ言葉を繋いだ。


「……とにかく、きちんと事情を説明して下さいよ。オレには聞く権利があるでしょ?」


辻谷はバックミラー越しにチラリと視線を送って来ると、おもむろに口を開いた。


「……まぁ、そうだな。こうなった以上は仕方ないか。本当は守秘義務があるんだけど」


もったいぶってねぇで早く言いやがれ。


「その代わり、他言は無用だぞ。個人のプライバシーに関する事なんだから」


「……はい」


『だったら最初からオレを巻き込むなよ』とは思ったものの、チャチャを入れられるような雰囲気ではなかったので、大人しく辻谷の次の言葉を待った。


「俺、さっき就職したって言ったろ?」
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