ショータロー☆コンプレックス
人の心はどうにもならないものだし、そこまでは別に仕方のない事だと思う。


それが罪だというのなら、おちおち男女交際なんかできやしない。


「もちろん。だけど、Aさんいわく、やっぱり後から思い返すと怪しい言動てんこ盛りだったんだよ、その男は。さっき、決定的な被害はなかったと言ったけど、男は常日頃からチョコチョコとAさんにたかっていたらしい」


「たかる?」


「そう。といっても食事代とか洋服代とか、一回一回の額は大したことないんだけどな。でも、デートの度に何やかんや支払っていて、結果Aさんは男に半年間で数10万円もの金を貢いだ事になる」


「え。でも、確か男は薬剤師なんでしょ?」


別に、『デート代は必ず男性が出すもの』なんて法律はないけど、プライドの問題があるし、女性ばかりに払わせるってのは男としてはいたたまれないよな。


しかも薬剤師なら、かなりの給料をもらっていた筈なのに。


「その男は薬学部に通うのに、奨学金制度を利用していたらしいんだ。その返済がまだ続いていて、月々の生活費をかなり切り詰めていたらしい」


「…外車に乗っているのに?」


長年ペーパードライバーだったから車に対しての知識は大して持ち合わせていないけど、追跡中のあの車が国産車じゃない事くらいは瞬時に分かった。


あまりにも有名なマークがくっ付いているから。
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