ショータロー☆コンプレックス
「そんな事ねーよ。俺だってずっとペーパードライバーだったし。頻繁にハンドル握るようになったのはつい最近だぜ」


「あ、そうなんですか……」


「つーか、きちんと教習所通うんだし、男だったらこれくらいできて当たり前じゃね?お前が鈍くさいだけだよ」


ま、またそんなあからさまにヒドイ言い方を!!


たまたま自分が運転に向いていたってだけの話じゃんか。


それに、そういう、男女差別になるようなことは今の時代言っちゃいけないんだぞ!


「そんで話を元に戻すけどさ」


オレへのフォローは当然ないままに、辻谷はマイペースに話を再開した。


「Aさんは男から、いかにも怪しげな相談を持ちかけられたらしいんだ」


「……相談?」


しかしオレも、辻谷の毒舌には大分慣れて来たようで、すぐさま気持ちは浮上した。


なにしろ好奇心には勝てない。


コイツへの怒りやわだかまりはとりあえず置いといて、ここまで来たら、最後まで話を聞いてやろうじゃないか。


「男はAさんに、『自分が小学生の時に父親が亡くなり母子家庭となってしまったから、奨学金で大学に通った』と事前に話をしていたんだけど、今度はその女手一つで自分を育ててくれた母親が病に倒れたと報告して来たんだな」


「もしかして、その為の費用を捻出して欲しいと言われたとか?」
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