ショータロー☆コンプレックス
「Aさんもその点については、今は反省している。だけどその時は、将来自分の義母になるかもしれない人の為に、何かしたいという思いもあって、男の頼みを聞き入れようとしてしまったんだな」


探偵である自分達にとっては大切なお客様だからなのか、辻谷は決してAさんを責めるような事は言わなかった。


「とにかく詐欺を働くような輩は口が上手くてとんでもなく悪知恵が働くものなんだ。もしかしたら俺やお前だって、同じ罠に嵌まってしまう可能性は、なきにしもあらずなんだぜ」


「……もちろん、あくまでも悪いのはその男ですけど」


ここまで言われてしまうと、Aさんに対して厳しい発言をしてしまった事が、何だかすごく気まずくなって来る。


辻谷はともかく、確かにオレだって、いつ、そういうトラブルに巻き込まれてしまうか分からない。


「明日は我が身」ってやつだ。


しかし、この男の性格って、イマイチ良く掴めないよな。


バリバリ毒舌で容赦なくキツイ奴なのかと思いきや、あるポイントでは結構人情派というか。


もしかしたら、女性に対してだけは優しいんだろうか。


依頼人というのを差し引いても、ここまでのオレへの態度とは雲泥の差があるもんな。


「……じゃあ、一体Aさんは、どの段階で踏みとどまったんですか?」


とりあえず、オレは話の続きを促した。
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