ショータロー☆コンプレックス
「決定的な被害には遭わなかったって言ってましたよね?」


すでに、かなり際どい所まで来てしまっているけれど。


「金を用意して、それを渡す直前だよ」


その内容の割には、辻谷は淡々とした口調で答えた。


「男は電話で、金の受け渡し場所に、いつも利用している喫茶店を指定して来たらしいんだ。だけどAさんはそんな所で金のやり取りをするのは抵抗があった」


「そりゃそうですよね」


「だから『この機会にお宅にお邪魔させていただいて、きちんとお母様に紹介して欲しい。その時にお金を渡す』と答えたらしいんだな」


「まぁ、普通はそういう流れになりますよね」


つーか、それはホントは借りる立場の奴が言うべき言葉なんじゃなかろうか?


何でAさんの方から催促しなくちゃいけないんだか。


さぞかし言いにくかった事だろう。


「50万って言ったら、30そこそこのOLにとってはなかなかの大金だからな。そんな軽い気持ちでパパっと貸せるような金額じゃない。だからAさんはそういう提案をしたワケだけど、それを聞いた男はあからさまに機嫌が悪くなったらしくて」


「とうとう本性を現したんですね」


AさんはやっぱりOLさんなんだ、そしてアラサーだったんだな、と新たに取得したデータを脳内に保存しつつ、オレは返答した。
< 24 / 63 >

この作品をシェア

pagetop