ショータロー☆コンプレックス
「そしたら?」


「男は『分かった。君にはもう迷惑はかけない』と告げた後、唐突に電話を切って、それ以降、連絡が取れなくなってしまったそうだ」


「うわ……」


あまりにもセオリー通りの展開じゃないか。


「携帯番号もメアドも変えられてしまった。住所は元々知らないし、勤務先は「〇〇大学病院」と聞かされてはいたけど今となっては信用に値しない情報で、うかつに問い合わせしたりしたら自分が恥をかく可能性大なので、行動に移せなかったそうだ。車の車種とナンバーは覚えてるけど、だからといって素人にはどうする事もできないし」


「そうですよね」


「何かの事件に関係しているというのならナンバーから警察が個人を特定するだろうけど、Aさんはこれといった被害には遭っていなかったから」


「そこなんですよね~」


オレは思わず地団駄を踏んだ。


精神的にはかなりのダメージを受けただろうけど、確かにそれだけでは警察が介入するのは難しいだろう。


「別れたのは正式に婚約する前だし、デート代を女性に出させたりプレゼントを頻繁にもらったからといって、何ら法に触れるような事ではないからな。警察に相談に行ったとしても、きっと門前払いされるのがオチだろう」


「だからAさんは探偵事務所に頼る事にしたんですね?」
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