ショータロー☆コンプレックス
ようやく合点がいった。


「そういうこと。彼女自身が自分の置かれていた状況をきちんと把握したかったというのもあるけど、でも、それだけが理由じゃないんだ」


「ん?どういう事ですか?」


「男が本当に結婚詐欺師なのだとしたら、ターゲットがAさん一人というのは考えにくい。過去はもちろん、今現在も騙されている女性がいるかもしれない。男の素性を探るのと同時に、もしそういう人物の存在が掴めたら、その身元も調査して欲しいと依頼されている」


その時、前方のゴルフは左にウィンカーを出し、ほどなくして交差点を左折した。


当然辻谷もそれに倣い、左にハンドルを切る。


それまで走っていた二車線道路とは違い、車がギリギリすれ違えるくらいの道幅で、さらに両脇には商店が並んでいるので歩行者だの自転車だのが我が物顔で往来していて、かなりドライバー泣かせの路地であった。


しかし辻谷は特に負担に感じている様子もなく、リラックスした様子でハンドルをさばきながら、さらに、淀みない口調で話を続けた。


「新たな犠牲者を出さない為でもあるし、残念ながら、すでに被害に遭ってしまった女性がいるのならば、その人に情報提供して証拠固めをして、警察に被害届けを出すのを勧めるつもりらしい。分かりやすく言うと『被害者の会』を結成するって事だな」
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