ショータロー☆コンプレックス
「え?なんで分かったんですか!?」


それが把握できるような事、どこかに書いてあったっけ??


「ナンバーが『わ』だからな。つっても、俺も尾行調査の時に初めて知ったんだけど」


「び、びこう?」


「ちょうど良いや。最寄り駅まで乗せてけよ」


オレの問いかけには答えずに、男はニッと歯を見せて笑うとそう命令して来た。


「20分くらいの距離ならいつもは歩いて移動するんだけど、何だか今日は疲れちまって。最後だからって、張り切り過ぎたかな」


「え?最後…?」


「俺、就職したんだよ。だからもうフリーター生活は卒業。ただ、今日の仕事は今まで世話になってた人に『急病で来られなくなった奴がいるから穴埋めに行ってくれ』って急遽頼まれてさ。最後の恩返しをしとこうかなと」


「はぁ…」


本人が待ち望んでいた訳でもないのに、あんな良い役が回って来たって事か…。


ホントこの世界って、タイミングや運に大きく左右されるんだよな。


「って、そんなこと良いから、早くドア開けろよ」


何て事を考えていたら怒られてしまった。


先ほどから、これでもかとばかりに俺様っぷりを発揮し続けている男に内心かなりムッとしたものの、それでもその気持ちを抑えてオレはキーの解錠を行った。


今までの経験上、こういう相手とやり合うにはかなりの労力が必要となる。
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