ショータロー☆コンプレックス
ちょっとだけ、好感度が上がっちゃったりして。


「ちなみに俺は辻谷剛っていうんだ。『剛健』の『ごう』な」


「つじやごうさん、ですか…」


からかわれたりいじられたりした事なんかないんだろうな、と容易く予想がつく、奇抜さはないけれど適度にかっこ良い、オレが最も憧れる系統の名前である。


「あ。ほら、ショータロー。今なら行けんじゃね?」


するとその時ちょうど対向車線の車の列が途切れ、運転手のオレよりも早く反応し、辻谷はそう急かして来た。


「あ、はい」


そして慌ててアクセルを踏むオレに、またもや憎まれ口を叩いて来る。


「ったく。ホントトロイよな、お前。もっとチャチャっと曲がれねぇのかよ」


……自分が話しかけたせいでオレが運転に集中できなかったとは考えないんだろうか?


つーか、さっそく呼び捨てにするんかい。


ほんとに、絵に描いたような傍若無人っぷりだよな。


ほどなくして、無事駅前のロータリーにたどり着き、オレはウィンカーを左に出しながら車を停車させた。


もちろん、ロータリーってのはバスやタクシー乗り場として設けられているスペースなので、長時間の駐車は禁止である。


ただ、送迎の為に僅かな時間留まるくらいは大目に見てもらえるようで、オレの車の前にも数台、一般車両が停まっていた。
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