僕と、君と、鉄屑と。
「めんどくさいな。だから女は嫌なんだよ」
僕は本当に面倒だった。でも、直輝は、その写真を見て、ため息をついた。そして、いつものように、ポケットからロザリオを取り出し、握りしめ、許したまえ、と呟く。
「どうすればいいのか……」
なぜ? なぜそんな風に、悲しそうな目をするんだ、君は。僕は苛立ちを隠せなくなった。
「……君が、抱いてやればいいんじゃないかな」
僕はまた、おかしなシナリオを書いている。
「祐輔?」
「それで、気が済むだろ、あの女も。どうせ、溜まってるだけさ」
直輝は僕の、下品な発言に、また悲しげな目をした。
「俺が、あの女とセックスをしてもいいっていうのか?」
「仕事だと思えばできるだろう」
「祐輔……なんてことを……」
「嫌なら、構わないよ。他の人間にやらせるから」
僕は、ビールを飲みながら、明日の予定をチェックした。
「明日は早く帰れるよね。仕事が終わったら、麗子の部屋へ行って。多分、夕食を作っているから、それを食べて、美味しいって言えばいいよ」
「そんなこと、彼女を傷つけるだけだ!」
「じゃあ、他の人間にさせるよ。その方が、傷つけることになると思うけど」
僕は、最善の解決方法を提案しているだけだ。僕は間違っていない。僕は正しいんだ。なのに君は……何を、迷うことがあるんだ。何を、悩んでいるんだ。僕の言うとおりにしておけば、何の問題もないんだ。君を導くのは、君を救うのは、そんな小さな鉄屑じゃなくって、僕なんだ。
「……わかった」
直輝は項垂れて、深くため息をついて、寝室へ行った。彼は、僕のシナリオに、疲れている。でも、彼は僕のシナリオを演じる。なぜなら、僕を愛しているから。君が一番大切なものは、そんな鉄屑でも、どこを探しても見つからない神様でも、ない。目の前にいる、この、僕、なんだから。
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