僕と、君と、鉄屑と。

(2)

「お待たせ」
彼に会うのは、二週間ぶりだった。彼は私の顔を見て、少し痩せたのか、と言った。やっぱり、彼は優しい。そして、あの夜、私が聞いた弱々しい声はどこにもなくて、いつもの、自信に溢れた、逞しい、『夫』だった。
 
 私達は腕を組んで、色んな人に挨拶をして、少しお酒を飲んで、一時間ほどして、彼は仕事があるから会社へ戻ると言った。
「私も、行く」
ワガママを言ってみる。彼は優しく、私の髪を撫でて、そんなこと言うなよ、と、まるで子供を諭すように、優しく、優しく、微笑んだ。
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