僕と、君と、鉄屑と。
 初めて僕達がキスを交わしたのは、僕の告白から一ヶ月後。そして、その一ヶ月後、初めてのセックスをした。直輝は、僕の服を脱がし、僕の眼鏡を外して、優しい目で、僕の全てを見た。いや、眼鏡のない僕は、はっきり直輝の顔が見えなかったけど、直輝は、僕の髪の先から、足の先までを、その陽に焼けた掌で撫で、きれいだ、と言った。僕は、男とのセックスのやり方を彼に教え、彼は、愛のあるセックスのやり方を僕に教えてくれた。直輝は、優しく、抒情的に、包み込むように、まるで繊細な硝子細工を扱うかのように、僕を抱いた。僕はそんなセックスを、初めて知った。そのセックスは、僕がずっと思い描いていた、崇高で、甘美で、僕は直輝に抱かれながら、泣いた。今までの穢れが、彼の愛で、流れていくような気がしたから。
 でも、一つだけ、僕は許せないことがあった。
「祐輔は、女の子みたいだな」
僕は、女じゃないのに、直輝は、僕を女として、抱いていた。僕は男として、男の直輝と愛し合いたいのに。
「どこが、女の子みたいなの?」
「顔も可愛いし、色も白いし、線も細いし」
幼いころ、僕はよく、女の子に間違えられていた。だから母親は、僕にスカートを穿かしたり、髪にリボンをつけたりした。僕は男なのに。女ではないのに。自分が男に生んだくせに。
「僕は、男だ」
「わかってるよ。祐輔は、男だよ」
直輝の指が、僕を辿る。僕の指も、直輝を辿る。僕達は同じ体で、同じ場所で、同じシステムで、同時に感じ合う。僕達は、何もかも、僕達で分け合い、愛し合った。僕達は、男と男で、愛し合っている。
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