僕と、君と、鉄屑と。

「今日さ、村井さんのメガネとったとこ、初めて見た」
「なんで?」
「ナゲットのソースが飛んだ話したじゃん。メガネについたの、ソースが」
俺は膨らみかけた、麗子の腹を撫でながら、時々キスを交わしながら、麗子の話を聞いていた。
「見たこと、ある?」
「まあ、そりゃ、時々はな」
「意外にいけてて……かっこよくて、ビックリした」
確かに、祐輔は眼鏡をとると、随分印象が違う。普段はクールな、というより、冷淡なビジネスマンだけど、素顔の彼は、ずっと少年ぽくて、ユニセックスなオーラを出している。
「コンタクトにしたらって、言ったの。絶対もてるのに」
「そうだなあ」
祐輔は、自分の容姿が嫌いだと言う。痩せていて、色白で、細長い体が貧相で、俺の筋肉質で、小麦色の体が、羨ましいと言う。初めてキスをした時も、初めてセックスをした時も、祐輔は、僕を見ないでくれ、と悲しげに言った。なぜ、祐輔はそんなに自分を嫌うのだろう。麗子が言うとおり、醜いわけでもなく、美少年の部類に入るはずなのに。
「いけてる、って、ダメなの?」
「うん?」
「村井さんに、そんな言葉使いはそろそろやめなさいって、怒られちゃった」
「そうか。あいつは、俗語が嫌いなんだよ」
「ふうん。ねえ、次は、俗語が嫌いじゃない人にしてね。もう何か言うたびに怒られてたらストレス溜まっちゃう」
「村井は村井で、お前のことを考えてるんだ」
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