僕と、君と、鉄屑と。
空の向こうに

(1)

「森江紗織と申します。よろしくお願いします」
村井さんの代わりに迎えに来てくれた、新しい秘書さんは、ちょっと地味だけど、理知的で、可愛らしい。
「こちらこそ、よろしくね」

 月に二回もある、ちょっと苦手な『奥様ランチ会』が終わって、私はどっぷり疲れていた。何を食べたかすら、覚えてない。
「ねえ、ちょっとお茶しない?」
村井さんとなら、家にまっすぐ帰るところだけど、なんとなく、紗織さんと話がしたくて、私はそう言った。
「パンケーキ、お好きですか? あっ、でも、お食事、されたところですよね」
「ううん、あんまり食べた気しないの。パンケーキ、食べたいかも」
「じゃあ、美味しいお店、知ってるんです」
ああ、女子! やっぱ、代わってもらってよかった!

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