今宵、月が愛でる物語
………私、なにやってんだ。

「頭ひやそ。」

ーポーンー

ガコン、と、扉が開く。

通路に出てエントランスに向かおうとすると、

「…っ!」

そこにいたのは…

息を切らせた、黒崎さんだった。

「…どうやってここまで……」

「階段ダッシュに決まってんだろ。…疲れることさせんな、バカ。」

怒ったような、焦ったような表情を含んだ顔の彼は、追い詰めるように私に迫る。

思わず後ずさりするけれど、月明かりのさす窓際まで難なく追い詰められてしまう。

「ちょっ…黒崎さん、あの、ちか…!」



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