今宵、月が愛でる物語
絡みとられる視線は…仕事中とは違った魅力を醸し出している彼を映す。

「……………ずっとこうしたかったんだ。

この唇。どんな味するのかなって。」

すっと、下唇を指先で撫でられ鼓動が速さを増す。

「黒崎さん…。」

「もっかい、欲しい。……いい?」

「……っ!」

返事をする間も無く、再び啄ばまれる唇。

何度も何度も…角度を変え、私を襲う。

なす術のない私は求められるままに唇を差し出し…無意識のうちに両手は、彼のスーツに縋り付くように手を添えていた。



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