今宵、月が愛でる物語
午後8時半をまわり、なんとか残業を片付け皆で退社する…が、書類を取りに戻るふりをして俺はひとりオフィスに戻った。

それを見た三沢さんは…ニヤリと笑い、『頑張れよ』と、口パクで言い残して行った。

まさか、俺の行動に気づいた?

まぁいいや。構わない。

誰もいないオフィスに電気を付け直し、橘のデスクを見ると…

「やっぱり。コレだもんな。可愛いヤツ。」

そこにはさっき見たのと同じように書類に挟まる定期があった。

「絶対忘れると思ったんだよ。なぁ、お前のご主人様は抜けてるよなぁ。」

そうひとり言を言いながらそっと定期を手に取る。


さぁ、ここからが勝負だ。


あいつは誰にも渡さない。


今日こそ絶対、俺のものにするんだ。


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