今宵、月が愛でる物語
ーカタンー

立ち上がる雰囲気を察知して思わず顔を上げたけれど、眩しいほどの月明かりを背負った奏一の表情は逆光で読み取れなかった。

「…奏一?」

「……………」

目の前に、月明かりを背に立つ奏一。

その両方の手は…一度拳をギュッと握りしめ、そしてゆっくりと私に向かって差し出される。

「そう……っ!」

名前を呼び切る前に、両頬に触れた感触。


これまで感じることのなかった、彼の温もり。


「………お前、さ。」

奏一が片膝をつき目線を並べてくると、そのまま視線を絡み取られて動けなくなってしまった。

薄っすらと照らされるその姿。


………彼はこんなに、精悍な顔つきだっただろうか。


こんなに、広い肩幅をしていただろうか。


こんなに……大きな掌だっただろうか。



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