今宵、月が愛でる物語
「………奏一はさぁ。」

ポケットティッシュを掌で弄びながら俯いたまま話しかける。

「んー?」

「お月様みたい。」

「……なに?いきなり。」

「…気づくといつも近くにいる。

でも絶対触れたりしない。」

「……………」

それはずっと思ってきたことだった。

こうして泣いているといつも姿を見せるくせに、かならず一定の距離を保つ。


月が地球と決して触れ合わないように。



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