今宵、月が愛でる物語
一面に降り積もった雪。
どこまでも真っ白で、月の光を受けたその小さな結晶たちは競い合うように煌めいて眩しさすら感じる。
その中で菫はひとり懸命に雪を掬っては握っていて…、でもサラサラとした粉雪は掌で握ってもうまく塊にならない。
「ねー冬汰(とうた)、なんで?
こんなにいっぱい雪があるのに雪だるまが一個も作れないなんて酷くない!?」
菫は無邪気だ。大学進学のためこの雪国に来てもう3年目になるというのに未だにこんな風に雪を喜ぶ。
「…菫。何度も言ったでしょ。気温が低くて空気が乾燥してる時に降るのが粉雪。
これは湿気が少ないから雪だるまにはならないの。」
「……ふぅん、そうだったっけ。」
心底つまらなそうに響く覚える気のない返事。
でも僕を見上げたその瞳は街灯に照らされた雪が反射してキラキラと輝く。
………はぁ。
澄んだ空気に向かって吐いた息がほわりと浮かぶ。その先に見える月はどこか儚げに見えた。
どこまでも真っ白で、月の光を受けたその小さな結晶たちは競い合うように煌めいて眩しさすら感じる。
その中で菫はひとり懸命に雪を掬っては握っていて…、でもサラサラとした粉雪は掌で握ってもうまく塊にならない。
「ねー冬汰(とうた)、なんで?
こんなにいっぱい雪があるのに雪だるまが一個も作れないなんて酷くない!?」
菫は無邪気だ。大学進学のためこの雪国に来てもう3年目になるというのに未だにこんな風に雪を喜ぶ。
「…菫。何度も言ったでしょ。気温が低くて空気が乾燥してる時に降るのが粉雪。
これは湿気が少ないから雪だるまにはならないの。」
「……ふぅん、そうだったっけ。」
心底つまらなそうに響く覚える気のない返事。
でも僕を見上げたその瞳は街灯に照らされた雪が反射してキラキラと輝く。
………はぁ。
澄んだ空気に向かって吐いた息がほわりと浮かぶ。その先に見える月はどこか儚げに見えた。