この恋を叶えてはいけない
「早見さん、ちょっと」
「はい?」
バイト先に入って、着替えを済ませると、店長に呼ばれた。
顔を出してみると、そこには店長ともう一人、見慣れない男の人がいた。
「今日から入った、戸村陵(トムラ リョウ)くん。
指導係りとして、早見さんにお願いしたいんだけど」
「あ、はい!」
急な指名に、若干の戸惑いを持ちつつも、
後輩の指導を頼まれるくらいに自分が成長したことに感激していた。
ここに入ってから半年。
思えば、あたしの後に入ったのは初めてだ。
「じゃあ、分からないことがあったら、早見さんに聞いて」
「わかりました」
低く、少し艶のある声。
男の人だと意識しつつも、あたしは戸村さんに向き合った。
「早見唯香です。よろしくお願いします」
「戸村陵です。よろしく…」
お互いに簡単に自己紹介をして感じたのが、結構無愛想。
必要以上にはかかわることはないだろう、とそう思った。