この恋を叶えてはいけない
 
「あ、えっと……はい…」
「方向どっち?俺、あっちやけど」
「あ、たしも……あっちです」
「ほな、一緒に帰ろう」
「えっ……」


さくさくと進められる会話。

あたしの頭の中は、プチパニックを起こしていた。


え、戸村さんって関西弁だったの?
仕事中、一切そういうの出さなかったから、イメージが一気に変わったんだけどっ……。


あたしの中での今日一日の戸村さんは、
一言でいうと無表情。

余計なことは一切言わず、まじめ人間って感じだった。

だから素の会話が、関西弁なんて思わなくて……。


「どうしたん?」
「あ、いえ……」
「あ、もしかして俺が関西弁ってことに驚いとる?」
「……はい…」


ここは隠しても意味がないので、素直にうなずいた。

あたしの答えに、戸村さんは軽く笑うと、


「まあ、しゃーないなぁ…。
 俺、オンオフ、しっかり切り替えとるから」


屈託なく微笑むその顔も、仕事中の顔からは想像つかない。


不覚にも、ドキッとしてしまった自分がいた。
 
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