この恋を叶えてはいけない
《どうした?》
ベランダに出て、
冷たい夜風にさらされながら、携帯に耳をあてる。
聞こえてくるのは、愛しい人の声。
「ちょっと、ね……。
声聞きたくなって……」
《そっか》
低音の心地いい声。
それだけで、涙が出るほど安心する。
《何かあったのか?》
電話越しから伝わる、心配そうな声。
あたしが分かるってことは
元気がないあたしの様子も、駿には伝わっている。
「ううん。
なんでもない。
だけど……」
上を見上げて、星空を眺めた。
頬には一筋の熱い涙。
「今度会ったら……
ぎゅって抱きしめて」
今は早く
彼の温もりが欲しい。