この恋を叶えてはいけない
「え……?」
次の日、大学へ行こうとして家を出ると、
アパートから少し歩いたところに、見知った影。
その影を見た瞬間、幻かと思った。
だけど相手もあたしに気づき、ゆっくりと歩を進める。
「……どうして…」
「だってお前が言ったんだろ?
抱きしめろ、って」
笑って答える彼は、すぐ目の前に来て歩を止めた。
「そう、だけどっ……でもっ……」
「唯香……」
「…っ」
ふわりと体が温もりに包まれる。
大好きな匂いに……。
その温もりに、どうしようもないほどの愛しさが舞い上がって
あたしもその背中に腕を回した。
「……駿っ…」
この世で一番愛しい名前とともに……。