この恋を叶えてはいけない
「そんなこと…言われたって……。
簡単には泣けないよ……。
泣く理由が見つからない」
最後に残されたのは、二股をしていた貴志の姿。
必死に自分を守ろうと、簡単に見破られる嘘をつき続けていた情けない姿。
あんな姿を見て、いったいどうやって悲しめばいいんだろう……。
「思い出せばいい。
そいつとの楽しかった思い出……」
「楽しかった、こと……?」
「そいつとの出逢い、両想いになった日。
記念日、喧嘩した日々……ありふれた日常を」
「……」
胸にスーッと入ってくるように、あたしは貴志との思い出を呼び起こした。