この恋を叶えてはいけない






「落ち着いた?」

「あ……すみませんっ……」


しばらく抱きしめられ、我に返ってすぐに体を放した。

戸村さんは笑いながら「残念」とか言っている。


「あのっ……
 ほんとにいきなりすみませんっ……。

 あまりにも怖くて、咄嗟に戸村さんを呼んじゃって……」


「謝ることないねん。
 逆に嬉しかったけどなぁ……。

 唯ちゃんが咄嗟に思う相手が俺やって」


「……」


ストレートにそんなことを言ってくる戸村さんに、言葉が詰まった。
 

だけど本当に、
どうしてまだ、そんなに親しくもない戸村さんを呼んでしまったんだろう……。



「あの……
 外に誰かいました……?」

「んー……。
 そう思って、辺りを見渡して来たんやけど、
 これといって怪しい人物はおらんかったなぁ……」

「そうですか……」


なんだかこれって、あたしの自意識過剰のような気もしてきた。


付けられているってのは勘違いで、
インターフォンを押されたのも、イタズラとかで……。
 
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