この恋を叶えてはいけない
 
「なんや、根性のないストーカーやなぁ……」


陵は男の背中が見えなくなると、思わずそんな言葉を漏らした。

そうこうしているうちに、お風呂場からカチャとドアが開く音。


どうやら、唯香がお風呂から出たらしい。


再びはしる緊張を抑え、陵は玄関の鍵をしめ、部屋へと戻っていった。















「………唯香……」



陵に追い返された男は、暗い夜道を一人歩いていて……



「……ちゃんと見つけられたんだな……」



泣きそうなほどの切ない笑顔でつぶやく。



「もう……

 俺のところに戻ってくることはないか」



自分をあざ笑いながら……

男……駿は再び、大阪へ向かう新幹線へと乗り込んだ。
 
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