この恋を叶えてはいけない
「戸村さん、ベッド使ってください。
あたしは床で寝ますから」
「いやいや、何言ってんねん。
女の子を床に寝かすわけあらへんやろ」
「でも……
お客さんは戸村さんですし……。
あたしが勝手に呼び出して、床になんか寝かせられないですよ」
「それでもアカンって。
それに、唯香ちゃんのベッドでなんか寝たら、あかんこと想像してまう」
「なっ……」
冗談っぽく笑ってそんなことを言う戸村さんを見て、
カッと熱くなったけど、それがあえての譲り文句だと分かった。
でもそこまで言われたら仕方ない。
あたしはお言葉に甘えて、いつものようにベッドで寝て
戸村さんには毛布を渡した。
さすがに一人暮らしの……
しかもめったに人に心を開かなくなっていたあたしが、誰かを家に泊めたことなんかなくて
スペアの布団もなかった。
だから戸村さんは、床に薄い毛布のみ。
掛け布団を渡そうとしたら、それはあたしのだと言って受け取ってくれなかった。