この恋を叶えてはいけない
「ありがとうございました!
よろしくお願いいたします」
と、遠藤さんと戸村さんとともに頭を下げる。
そして車で去る取引相手を見送ると、思わずため息が漏れた。
「二人ともありがとう!
二人のおかげで、無事に商談成立したよ」
「そんなん、遠藤さんの頑張りのおかげやろ」
「そうですよ!あたしたちは、ただサポートしただけですから」
「いやいや!」
なんとか相手を納得させるプレゼンをすることができ、あとの会合でも機嫌を損なわせることはしなかった。
相手もいい顔になり、無事に商談成立。
「悪いけど、俺は今日中に帰らないといけなくて……」
「え、今から帰るんですか?!」
「そー。じゃないと、嫁が怖いんだよ」
「あはは……」
遠藤さんの返しに、思わず苦笑した。
確か遠藤さんは、結婚してまだ間もない。
あんな言い方をしているけど、でも本当は遠藤さん自身も、奥さんと一緒にいたいんだろうな……。
「二人は泊まっていくんだろ?」
「まあ……」
「戸村に食われないようにね」
「え……」
「こら、遠藤さん!バラさんといて!!」
「ははっ……」
「ちょっ……」
そんなやりとりをして、遠藤さんは先にタクシーへ乗り込むと、大阪駅へと向かってしまった。