この恋を叶えてはいけない
「さて、俺らも行きますか」
「はい……。
あ、そのまえにちょっとお手洗いに行ってきていいですか」
「はいよー。外で待っとるわ」
一言声をかけて、あたしは再び店内に戻った。
「落ち着け、自分……」
化粧室の鏡と向かい合って、両手で頬をパンと叩いた。
なんだろう……。
やけに緊張する……。
いつも同じ部屋で、しかも一つのベッドで寝てるのに、
違う土地と思うだけで、まるで旅行に来ているみたいで……。
そもそも、会社が用意してくれたホテルに泊まるんだから、部屋もバラバラだ。
それを思い出し、緊張を解いて化粧室から出た。